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No.1044 三木はるか個展
撮る撮られる全部わたし
―三木はるかとセルフ・ドキュメンタリー
2022 2/20 Sun.,2/27 Sun.,

      タイムテーブル

    日付 2/20 2/27
    14:00 A B
    16:30 B A

      会場 Venue

    • イメージフォーラム3F「寺山修司」
      東京都渋谷区渋谷2-10-2
      TEL. 03-5766-0116

      Image Forum 3F "Terayama Shuji"
      2-10-2, Shibuya, Shibuya-ku
      TEL. 03-5766-0116

      当日受付 Door

    • 一般700円/会員500円

  • にじむ・あふれる・こびりつく

    にじむ・あふれる・こびりつく

  • もうアイドルなんかならない

    もうアイドルなんかならない

  • わたしバスガイド、あなたたち修学旅行生

    わたしバスガイド、あなたたち修学旅行生

  • 三木はるかるた2017

    三木はるかるた2017

  • そげる・たわむ・外に流れる

    そげる・たわむ・外に流れる

  • 劇場版三木はるか賞2018

    劇場版三木はるか賞2018

  • 三木自由律はるか2019

    三木自由律はるか2019




イントロダクション

ちょっと大げさに言ってしまうと、三木はるかも伊藤高志や大木裕之と同じくスタート地点からスタイルを確立してしまった映像作家である。というより、自作自演というスタイルが最初にあったので、創作を続けて来られたのかもしれない。これはひとつの才覚である。表現方法が多様化してなんでもありのこの現代で、個人がシングルチャンネルの「映画」表現にこだわってコンスタントに作品を発表し続けるというのは簡単なことではないと思う。しかも被写体は常に自分で、日常生活や人間関係をさらけ出さないといけない。まるでそのフィルモグラフィーは実験映画芸人と化した三木はるかの芸道一代記である。
最初の作品の『にじむ・あふれる・こびりつく』は自らを登場人物として、メディアに登場するステレオタイプな人物像をカリカチュアライズして演じる作品だったが、2作目の『そげる・たわむ・外に流れる』は三木はるかが本人として登場し、自らの物語を語り始める。以降、虚実織り交ぜて(時には自虐的に)自身の物語を語るスタイルを中心としてフィルモグラフィーが増えていく。
三木さんはイメージフォーラム映像研究所の卒業生であるが、その前に日本大学芸術学部映画学科の脚本コースを卒業している。その時に所沢のケーブルテレビ局でレポーターをした経験が自作自演の発端になっているのは、3作目の『もうアイドルなんかならない』で窺われるとおりなのだろう。ふと考えると、「脚本コース」の学生が自作自演するのは珍しいのではないだろうか。スタッフが様々な役割を兼ねる自主映画は別として、出演もする脚本家というのは映画史の中ではあまりいないはずだ。しかし、脚本を学んだことが作風を独特なものにしているのは間違いない。三木さんの作品はセルフ・ドキュメンタリーの形を取ってはいるが、現実を超越したいという欲望が常に渦巻いている。その肥大化した欲望が作品を破壊することなく、脚本を学んだ経験から生み出される緻密な構成と編集の妙によって映画的な興奮へ転換していくことに唸らされる。『劇場版三木はるか賞2018』はそんな優れたストーリーテラーとしての三木さんのひとつの到達点だと思っている。
今回のプログラムはイメージフォーラム・シネマテークでは初の三木はるかの単独個展であり、10年に及ぶ自作自演の自己愛の集大成なので、全部見るとお腹いっぱいかもしれないが、まあ、お腹いっぱいだと思っていても、もうちょっとくらいは入るものである。(イメージフォーラム 門脇健路)

 

上映作品

Aプログラム(4作品80分)
にじむ・あふれる・こびりつく  デジタル/13分/2010
もうアイドルなんかならない  デジタル/27分/2012
わたしバスガイド、あなたたち修学旅行生  デジタル/11分/2013
三木はるかるた2017  デジタル/29分/2018

Bプログラム(3作品102分)
そげる・たわむ・外に流れる  デジタル/26分/2011
劇場版三木はるか賞2018  デジタル/65分/2019
三木自由律はるか2019  デジタル/11分/2019

※各日16:30の回上映後にティーチインあり。
 

作家による作品解説

にじむ・あふれる・こびりつく
NG、リテイク、OKカットの前後、長いコメント、ノイズなど、使えないと判断された映像たちは本編をよりよいものにするためにいさぎよくカットされます。映ってはいけない映像の残骸たちがスクリーンに映りたい思念を蓄えて逆襲してくるとしたら?
★イメージフォーラム・フェスティバル2012ヤング・パースペクティヴ入選


もうアイドルなんかならない
NHKの人気番組『東京カワイイTV』からの出演オファーをきっかけにテレビに映りたい〈三木はるか〉が大奮闘。そのときもう1人の《三木はるか》は売れっ子アイドルとして苦悩していた。映像作家・三木はるかの公共放送レベルの野望は成就するのか!?一粒で二度美味しい虚実入り交じるファッショナブル映画。
★イメージフォーラム映像研究所第35期卒業制作展最優秀賞
★アイドル映画祭2019優秀出演者賞
★東京フェイクドキュメンタリー映画祭2020入選


わたしバスガイド、あなたたち修学旅行生
「ぼくたち1組A班は修学旅行で訪れた鎌倉の思い出を映像にまとめてみました」という設定で、働いている学習塾の先生たちに学ランを着せ、カメラを持たせ、演技をしてもらった。わたしはバスガイドになりたかった。映像制作の経験のない人間たちで映画を作ってみたらどうなるのか、リハーサルなしの一発勝負に賭けて撮影を試みた。
★イメージフォーラム・フェスティバル2014ヤング・パースペクティヴ入選


三木はるかるた2017
31歳。作家として芽が出ず、不安定な収入、恋人にも距離を置かれ、心はマイナス方向に傾きます。せめてこの気持ちをかたちにしたいと自虐短歌を100首作りました。プライベートな悩みやけったいな恋愛観が詰まった歌たち。かるたにしてみんなで遊んでみましょう。
★イメージフォーラム映像研究所第41期卒業制作展卒業生作品セレクト集選出


そげる・たわむ・外に流れる
下着メーカーのワコールが発表した研究結果によれば、日本人女性の加齢による体型変化には「法則」があるのだそうです。そのことが書かれた2010年4月16日付け朝日新聞朝刊の記事を、わたしはトイレの壁に貼っていました。“登場人物が8ミリとビデオを行き来する”というアイデアを映画にするとき、毎日眺めていたこの記事がわたしの気持ちをキレイに汲み取ってくれたのです。
★イメージフォーラム映像研究所第34期卒業制作展優秀賞
★イメージフォーラム・フェスティバル2012ジャパン・トゥモロウ入選
★第17回ながおか映画祭イメージフォーラム・フェスティバル2012ハイライト選出


劇場版三木はるか賞2018
三木はるかが本当に魅力的だったら、番組の企画は頓挫せず映画祭で賞は獲れるし恋人もできるんです。しょうがないって愚痴るのは簡単だけどほっといたらもっとダメになる。だから全部、三木はるかがやることにしました。身に降りかかるアンラッキーはすべてネタに、映画のためなら人生をねじ曲げてもオーケーという境地に至った初の長編。
★東京ドキュメンタリー映画祭2019入選


三木自由律はるか2019
種田山頭火がカメラを持ったら何を撮るか?多分ね、自然とか風景じゃなくて自分ばっかり撮ると思うよ。生きざまの不具合に落とし前をつけたい令和元年の三木はるか。生前葬でもする?否、結婚式が先だ!山頭火のことばを胸にウエディングドレスをまとい街をさまよう。
★輝け!令和元年度よりぬき短編映画祭選出


三木はるか(みきはるか)

  • 三木はるか

  • 1986年群馬県桐生市生まれ。2010年日本大学芸術学部映画学科卒業。イメージフォーラム映像研究所第34期・35期卒業。学習塾で国語教師をしながらセルフ・ドキュメンタリー形式の極私的実験映画を作り続ける。いまからでもなりたい職業は落語家とグラビアアイドル。私淑する映像作家はソフィ・カルとクリストフ・シュリンゲンジーフ。