イメージフォーラムが所蔵するアメリカ実験映画史に残る重要作を上映。
上映プログラム
リトアニアへの旅の追憶 ジョナス・メカス / 16ミリ / 87分 / 1972
ソヴィエトとナチス・ドイツに故国を蹂躙され、1949年にアメリカへ渡ったジョナス・メカス。27年ぶりに訪れた故郷リトアニアでの母、友人たちとの再会、そして風景。メカスは自在なカメラワークとたおやかな感受性でそれらの全てをみずみずしい映像と言葉で一つの作品にまとめ上げた。この感動的な映像叙事詩はメカス自身の代表作であるばかりでなく、アメリカ・インディペンデント映画の不朽の名作として広く愛され続けている。
ジョナス・メカス
1922年リトアニア生まれ。ソ連、次いでナチス・ドイツがリトアニアを占領。強制収容所に送られるが、45年に収容所を脱走、難民キャンプを転々とし、49年アにメリカに亡命。16ミリカメラで自分の周りの日常を日記のように撮り始める。65年『営倉』がヴェネツィア映画祭で最優秀賞受賞。「フィルム・カルチャー」誌刊行、フィルム・メーカーズ・コープ設立。1970年にNYにアンソロジー・フィルム・アーカイヴズを設立。2019年死去。
ヴィニール アンディ・ウォーホル / 16ミリ / 64分 / 1965
脚本:ロナルド・タヴェル/出演:ジェラード・マランガ、イーディ・セジウィック、オンディーヌ他
ウォーホルの第2期の映画は、より演劇的で、性のタブーの探求をおこなう彼の“スーパースター”たちをフィーチャーしている。イーディ・セジウィックを一夜にしてスーパースターにした伝説の映画としても有名。後にキューブリックが映画化したアンソニー・バージェスの小説『時計じかけのオレンジ』の最初の映画化。一応のシナリオはあるが右端に座ってそれを見ているイーディがそのすべてを台無しにしてしまったSM的な室内劇の傑作。“アクション”はカメラが切り取るフレーム内を循環し、それぞれのシーンは、身振りが持つ情感についての緻密に組織化された演劇となっている。
アンディ・ウォーホル
1928年ピッツバーグ生まれ。ポップアートの旗手として知られるが、1963年から68年にかけて映画作品を多数制作。アンダーグラウンド映画シーンに多大な影響を及ぼした。1987年死去。
午後の網目 マヤ・デレン / 16ミリ / 14分 / 1943
共同監督:アレクサンダー・ハミッド/音楽:テイジ・イトー/出演:マヤ・デレン、アレクサンダー・ハミッド
道に落ちている花一輪。少女の影がそれを拾い、やがて少女は玄関の扉を鍵で開けて家に入る。部屋のなかにはパン切りナイフや受話器の外れた電話。少女は階段を上る。風にたなびくカーテンと空転するレコード。少女は椅子に座り、瞳を閉じる。その傍らに同じ少女が立ち、窓の外を眺める。夢のような景色……。デレンは夢を媒介にしながら、内面の探求に向かうが、同時に映画そのもの構造をも探求した傑作。
マヤ・デレン
1917年、キエフの裕福なユダヤ人精神科医の元に生まれる。1922年、9歳の時にアメリカに移住。大学ではジャーナリズムや政治学を専攻していたが、黒人舞踊家キャサリン・ダンハムと出会い、彼女の興味はダンスと人類学へ向かう。その後、亡命中の映像作家アレクサンダー・ハミッドと出会い結婚。翌年の1943年、26歳の時に『午後の網目』を制作する。この作品は1947年のカンヌ映画祭で実験映画部門のグランプリを獲得し、評価を決定的なものとする。44歳で脳溢血で死亡するまで6本の映画作品と1冊の著作を残し、現在にいたるまであらゆるアーティストに影響を与えている。
A MOVIE ブルース・コナー / 16ミリ / 12分 / 1958
ファウンド・フッテージという手法を使った作品の嚆矢とされ、これによりブルース・コナーは現在広く普及している映像制作におけるリミックスやカットアップの先駆者とみなされている。またこうした技法を駆使したことで、「ミュージックビデオの父」とも呼ばれた。
ブルース・コナー
1933年生まれ。実験映画のみならず、彫刻、絵画、コラージュなど幅広い表現活動を行なった。主な映画作品として『コズミック・レイ』(61)、『5時10分発ドリームランド行き』(76)、『アメリカは待っている』(82)など。2008年死去。
遠くを見れない男 ピーター・ローズ / 16ミリ / 33分 / 1981
作者のピーター・ローズは、アメリカ実験映画におけるポスト構造主義を代表する映像作家。この作家の特質は、コンセプトはきわめて硬質であるにもかかわらず題材の基本はパーソナルな体験をよりどころにしていること。映像がきわめてリリカルでしかも壮大なスケールで捉えていることなど、これまでの実験映画にはない数多くの要素を取り入れていることだ。
クライマックスといえる最終章(5部構成)では、作者が一人、サンフランシスコの金門橋をカメラを持って登る。この孤独な撮影パフォーマンスが、彼の肩に固定されたカメラが写し出す風景によって、観客に寂寞とした共感をもたらす。金門橋を吊す巨大なケーブルと、米粒のようにカメラを持ってたたずんでいる作者と、その向こうの無限に拡がる空間が、作者のパーソナルな体験を超越して、私たちにミクロとマクロが混在した不思議な世界観を与えてくれる。なお、プロローグにおける「むかしむかし、遠くを見れない男がいた」という詩は、実はクゥアモンテスという架空の詩人が、どこの国の言葉でもない”言語”で詠んだもの。また、作中に流れるSKIES OF AMERICA はオーネット・コールマンの楽曲。
ピーター・ローズ
1947年生まれ。映像のみならず、パフォーマンスやインスタレーションも多数手掛ける。彼の作品はホイットニー美術館、ニューヨーク近代美術館、ポンピドゥー・センターなどで展示されている。




