国内外の映像アート作品の上映、レクチャーを定期開催。古典的名作 から、最新の実験映画まで

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数房のはなし 倉重哲二 アニメーション映像個展
 interiorという言葉には”インテリアデザイン”という言葉にあるように室内装飾の意味合いの他に、人間の室内、つまり内面の・・・ とか、心の・・・ という意味があるらしい。倉重の描写する舞台や部屋は2D、3Dに関わらずギミックに凝っていて作品の構造がそのまま空間的にデザインされている。さらに、入れ子の構造を持ったり、緩やかに繰り返されたりといった「見えないインテリア」が非常に心地よい。なんだか精緻な話芸に耳を傾けている気分になってくる。聞けば『阿片譚』は落語の「頭山」がモティーフとのことだし、イメージフォーラム付属映像研究所の募集チラシも紀伊国屋ホールで落語を見た帰りだそうだ。今回の上映では作品間に小噺を入れて”語り”の雰囲気を盛り上げている。
 クレイアニメやコラージュアニメ、CGや8ミリフィルムを実に器用に使いこなすテクニックの持ち主だが、この作家の独自性は引籠りの美的視線、妄想の煙の立篭める部屋のインテリア・デザインの力である。新作は淡々とした幽霊譚だそうだ。期待したい。(澤隆志)

数房のはなし
 拙作をあらためてならべてみると部屋の中を舞台にしたものが多い。そうでなくとも、限定された空間で行われる話ばかりである。作品中の部屋の構造、内部のインテリアを考えることは、わりと楽しい。部屋の構造を考えてそこから物語が始まることも少なくない。部屋の中に自分を置き、ゆっくり夢想する。椅子の座り心地、壁の手触り、電球が照らす床の色合い、埃や黴の匂い。けれども、ふと気づくと実世界における自分の部屋の構造に関しては、あまり頓着してないようだ。
 部屋の中の話、つまり内側に視線を向けさせる物語の構造は、妄想や空想の象徴のようで、自分の根本なのかもしれない。天井のしみからさまざまな物語を夢想していた子供のころの時間は今考えても恍惚とする。けれども、実のところ部屋にこもるのは苦手である。何もない休日日がな一日、自分の部屋で過ごすのはとても苦痛で、耐え難いものだと思う。
 部屋の中はいわば、空間的な枠なのだけれども、作品を練るときは、最初に枠を作る事が多い。どの作品も、科白は一切使ってない。できるだけ言語に拠らないでおこうと思っているのだけれども時々言葉を使いたい誘惑に駆られるので、今後どうなるかわからない。(倉重哲二)

紙魚●原稿用紙の上が舞台の話。紙魚(しみ)は本を食べる虫。インクのしみは”染み”。紙魚という字は想像たくましくする語感だ。
江南の魔術師●江南のとある舞台で演じている魔術師の話。当時、入れ子の構造をもった話というつもりで企画したと思う。上海にある大世界だとか、日本の寄席でもいいのだけれど、そういう場所で見る魔術、奇術というのは、今でも雰囲気があると思う。
子供のころ土手の木にぶらり人が下がっていた。●タイトル通りの設定。首吊り死体と子供の一夏の交流を描く。繰り返しの構造を持った話をと考えて出来上がった作品。吊り下げられている物体というのは、なんとなくいいシルエットだと思う。
阿片譚●1930年代、上海の煙館の一室で煙を食む男の妄想を軸に展開する物語。男の妄想はやがて煙の漂う部屋へと洩れはじめる。マレーシアのペナン島で見た阿片吸引者用のベッドがとても豪奢で、ずっと印象的だった。作中のベッドはわりと質素だけれども。
兎ガ怕イ●ウサギに監禁された少女の物語。子供の頃ご飯を食べながらいつのまにか眠りについていたことがあって、とても不思議な感覚だった。欲望から欲望へのなだらかな移行が作品のイメージ。実は、2001年に一度完成したのだけれど、もう少し付け加えたいエピソードがあったのでその後1年かけて仕上げた。因みに2001年完成時は「兎が怕い」だった。
机上の幽霊●怪談がやりたくて作り始めた。主人公と、彼が拾ってきた机にとり憑いていた幽霊の話。幽霊をもっと淡々としたものとして表現したいと思っている。個人的に霊は信じないほうなのだけど、話としては大好き。そんな作品をまとめて、”数房のはなし”としてみた。

倉重哲二
1972年福岡、久留米で生まれる。
1997年九州芸術工科大学卒業。
大学時代住んでた部屋は4畳半の部屋を2部屋という変な条件で2万5千円だった。
因みにこの部屋は現在福岡ローカルのドラマのロケ地になってたりして。
1998年中国へ。
2ヶ月ほど中国へ行ってたのだけれど、北京の安宿がタイル張りでかっこよかった。
そのときは、そのままベトナムへ南下した。ハノイで5ドルほどで泊まったのは単なる人のうちだった。部屋の中に祭壇なんかがあって変な感じだった。
1999年東京へ。
中野での住居は5万円6畳6畳の2K。大家さんの家の一室。大家さん宅の親子喧嘩が薄い壁を越えて毎日聞こえてくる。
2000年豊田へ。
3LDK6万5千円。
特に面白いこともないけど帰り道でいつも会う犬が自分にだけ絶対ほえる。

某果実兄さん
【略歴】本名・塚田洋一郎 S42年1月生 H2年12月 5代目立川談志入門 高座名・立川キウイ 落語家を志すも不勉強さがたたり、12年の前座生活の末、ついにH14年5月破門。現在復帰を目指し奮闘中!
【コメント】澤さんという方から暮れに突然メールが来て、何やら僕に『あたま山』って落語をやって欲しいとの話。破門中で現在は素人だから、誰か他の本職の方にお願いしたらと返事をすれば、今回の主役・倉重氏という方が僕のファンで断り切れず、結果引き受ける事に…。倉重氏とは初対面で3軒もハシゴして酒を飲み、『鮪納豆』が好物って事だけは分かったけど…。(笑)『あたま山』はセンスを問う噺。気が付けば登ってるかも。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Theater/7142/
江南の魔術師
阿片譚
机上の幽霊
受付
当日900円/会員600円

<上映作品>
紙魚 8ミリ/3分/1999
江南の魔術師 8ミリ/4分/1999
子供のころ土手の木にぶらり人が下がっていた
8ミリ/5分/1999
阿片譚 8ミリ/14分/2000
兎ガ怕イ ビデオ/14分/2002
机上の幽霊 16ミリ/7分/2003

以上、全て倉重哲二作品

※『阿片譚』は落語の「あたま山」がベースになっています。今回は特別に、上映前に解説+小噺として"某果実"兄さんによる『あたま山』を特別収録。

 

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