国内外の映像アート作品の上映、レクチャーを定期開催。古典的名作 から、最新の実験映画まで

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MIND THE GAP!
第9回 オランダ・アニメーション映画祭 凱旋上映展

 2002年11月13日から17日にかけて、オランダのユトレヒト市で第9回 オランダ・アニメーション映画祭が開催された。この映画祭は、質の高いアニメーションのあらゆる形式のプラットフォームとして機能している。上映以外にも、アニメーションに関するワークショップ、パネルディスカッション、トークショーや作品展示などもおこなっている。
 インディペンデントな作家を紹介することは、この映画祭の重要な部分である。それゆえ、私は日本の短編アニメーションのレトロスペクティブを上映できたことを誇りに思っている。イメージフォーラムはインディペンデントな映像アートを紹介する伝統を持っている。イメージフォーラムと オランダ・アニメーション映画祭との素晴らしい協力関係のおかげで、我々は国際映画祭の観客に日本の映像文化の重要なムーブメントを喜びとともに提供することができたのだ。今回は、ジャグラー、人形使い、観測者というテーマを持ったタイトルのもと、イメージフォーラムが持つアーカイヴからのセレクションが上映された。加えて、田名網敬一と伊藤高志それぞれのレトロスペクティブも上映された。田名網はアニメーションの世界では良く知られている作家だが、伊藤はアニメーション映画祭で上映されるのは私の知るかぎり初めてのことである。このことが、私が日本のインディペンデントなアニメーションに特別注意を向ける動機となった。
 欧米では、日本はいわゆる「アニメ」の国として知られている。しかし日本にはインディペンデントなアニメーションの分野でも長い伝統がある。例えば久里洋二や川本喜八郎、木下連三や古川タクなどは海外の観客にも知られている。アニメーションの世界はつねに成長し続けている。今日では、映像におけるジャンルの境界線は消えつつある。アニメーションはひとつのジャンルではなくなってきているのだ。マルチメディアのさまざまな使われ方が、異なる映像の分野を統合している。そこでヴィジュアル・アートとアニメーションの間に、より多くの共通点が見いだせるようになっている。もちろんこの現象は映画が誕生してから繰り返されてきたことではあるが。イメージフォーラムで、私は主にアニメーションの分野に存在する定型から自由な個人作家を見つけようとした。テクニックではなく、アイデアを作品の出発点にしている作品である。これは私がアニメーションと、例えばビデオ・アートの、あいだを行き来するセレクションをするということでもあった。
 今は2003年の1月だが、日本のインディペンデント映像の中心地で日本特集のセレクションを上映できるということは、私にとって2002年11月と同様に大変な名誉である。そしてそのセレクションは、伝統的なアニメーション文化のなかで育った西洋人によるものなのだ。→English(原文)
ゲルベン・シェルメル Gerben Schermer
オランダ・アニメーション映画祭ディレクター
www.awn.com/haff/
info@haff.nl

イメージフォーラム・プログラムについて
 今回紹介できた作品は、イメージフォーラム・シネマテーク、イメージフォーラム・フェスティバルの出品作品、またイメージフォーラム付属映像研究所の卒業制作作品からセレクトされたアニメーション作品である。また、テーマにおいて3つのカテゴリーに別れている。田名網敬一、伊藤高志については個展のプログラムを是非見ていただきたい。
 「ジャグラー」では、動画のメカニックな美を追及する実験映画作品を紹介する。まず光があたえられ、被写体がフレーム・インしてくる。始まりは一枚の写真。やがて数が増え、輪になって踊り、光の明滅が与えられ、連続写真として再起動する。分解写真として映画を思考する日本の実験映画の系譜を辿る旅。松本俊夫や居田伊佐雄の仕事は後の伊藤高志に大きな影響を与えた。そして伊藤高志『SPACY』に触発されて、今でも写真の再撮影アニメーションの作品はデジタルの精密さを武器にして量産されている。また峰岸恵一のアプローチは後の岩井俊雄 やグレゴリー・バーサミアンの立体彫刻アニメーションに通ずるものがある。佐藤義尚の作品では空間におけるパルス(柵やガードレールなどの繰り返し)と画面のフレームとの同期による見掛け上の動きが再現される。
 「人形使い」では90年代に流行した人形アニメーションの良作を集めてみた。シュバンクマイエルやクエイのエピゴーネンの感はまだ残るものの、アートとサブカルチャーを同一平面でとらえる美意識がいずれの作家にも見受けられる。下西要においてはサイバーパンクと解剖学、発生学との共存、保田克史においてはエロティックなアクションゲームのステージにロシア・フォルマリズムやイタリア未来派の機械礼賛の雰囲気を匂わせる。倉重哲二はIF映像研究所卒業制作作品『阿片譚』で重厚な、しかしユーモラスなモデル・アニメーションをつくりあげたが、翌年は一変してドローイングの味わいを持つCGアニメーションを発表した。(『U-SA-GUI』)小瀬村真美 は同一の設定でビデオ作品とインスタレーション作品を制作している。
 「観測者」では風景を扱った作品や特定の建築物が舞台になっている作品の特集。カメラを固定してセットの中のモデルや撮影台の原画を動かすのではなく、『FADE into WHITE#2』の主人公の様に視点そのものが移動してその軌道(stroke)自体が物語(story)となるものである。あるいは撮影するコマ間の時間をコントロールすることで、風景から日常性を剥ぎ取るのだ。相原信洋の作品は心象としての風景になろうか。30年近い彼のキャリアのなかでも彼独特の流動的で抽象的なタッチのドローイング・アニメーションは1977年の『カルマ』や1980年『水輪(カルマ2)』あたりから見られるものである。近年は映像作家、グラフィック・デザイナーの田名網敬一とアニメーションによる往復書簡を制作、同一の画面内に複数の作家の動画の混在するという世界的にも珍しいアプローチの連作を展開している。コマとコマとの芳純な差異の連続は2人の作家の差異と相まって益々複雑で楽しいものになってゆく。(澤隆志)

伊藤高志作品コメント
SPACY●ジェットコースター・パニック! 体育館の中をかけめぐる映像は無限の迷路空間に突入し、明滅するフリッカーとなって網膜を刺激する。世界を驚愕させたアートフィルムの最高傑作。
BOX●もし、地球が立方体だったら。四角い六面に閉じ込められた風景は流れ、移り変わるが、その地球もくるくると回り続ける。CGアートにも大きな影響を与えた。
THUNDER●建築の設計図、あるいは音楽のスコアのように記号化された時間と空間。雷鳴とパルスともに光線が尾を引いて走り、めくるめく映像が見るものを圧倒する。
DRILL●何気ない玄関の空間が突然、折れ曲がり歪んでゆく。空間そのものが痙攣し、次第に激しさを増すが、同時にポエティックな味わいをかもしだす。
GHOST●全編長時間露光によるコマ撮り撮影。『Thunder』制作中にヒントを得た像を宙に浮かすアイディアを実現。
GRIM●室内の様々なモノからその表皮のみが剥ぎ取られ宙を漂い他のモノに張りつく。GRIMとは“ぞっとするような”という意味。
WALL●手に持った写真のフレームの中でれんが造りの巨大な倉庫が激しく半回転の往復運動を繰り返す。平面写真の中からダイナミックな奥行きが現れる一種の3D映画。悪魔の回路図●サンシャイン60を中心とした半径500mの円周を撮影ポイントとし、撮った写真をアニメートすることでビルを高速回転させる試み。
ミイラの夢●人の姿が消え去った街の風景や装飾がはがれ臓物が剥き出しになった様な建造物など、”死”のイメージを探すため都内をくまなく歩き回って撮った写真がモティーフ。(伊藤高志)
12月のかくれんぼ●5歳の息子とカメラを向け合った気鋭の映像作家によるホーム・ムービー。「時々この小さな人間は自分の何なのかと思うことがある」伊藤高志。
THE MOON●夜空に浮かぶ黄色い大きな満月とくしゃくしゃに歪んだ子供の映像。むかし夢の中によく出てきたような言いしれぬ快感に満ちた不条理な風景、空間。
ZONE●白い部屋の中で手足を縛られた顔のない男が小刻みに震えている。悪夢のように奇妙な事が次々と起こる。伊藤高志が生み出した新しいサイコ・ホラーか?
ギ・装置M●『七年目の浮気』のマリリン・モンローに扮した森村泰昌をモデルに撮影。女優、偽装、虚飾、セックス、死のイマジネーションを映像化。
モノクローム・ヘッド●黙々と空を切りバットを振る少女。静かな狂気とスピードに満ちたこの作品は伊藤高志の新たな境地を切り開いた傑作。これは伝説の生き物を呼び覚ます儀式か?
めまい●自殺を目撃した少女2人の心の状態を描く。若い人達の心の病や、私自身の最近よく感じる精神状態の不安定さから沸いてくる様々なイメージを繋いでみた。(伊藤高志)
静かな一日●1999年に16mmで制作されたサイレント作品に、メタ映画的な設定を持込み、サウンドをつけたビデオ作品。虚実が溶け合い、世界認識を曖昧にさせるという近年の伊藤作品のテーマの結実。

田名網敬一作品コメント
優しい金曜日●作者はアニメーションの特質を生かして、さまざまなイメージの記憶を、スクリーンの上に自由に飛翔させ、記憶のコラージュというべきスタイルを生み出している。(かわなかのぶひろ)
人工の楽園●田名網が描くこの人工世界は、ナマの自然に接するよりもさまざまなメディアを通じてつくり出される自然に親しんでいる。今日の我々の感性の象徴といえなくもない。(かわなかのぶひろ)
4・EYES●「4・ Eyes」は<オレンジと緑のグラデーションの空に真赤な極楽鳥が飛んでいる>という色感の世界に属する作品である。(かわなかのぶひろ)
闇の記憶・夢の陰影●夢と記憶を10年以上にわたって記録した1万点を超えるメモやドローイングが素材になっている。「記憶を編集したものが夢である」というのが私なりの結論である。(田名網敬一)
風の呼吸(アニメーションによる往復書簡)●田名網敬一と相原信洋が「降下」「落下」「墜落」「転落」をテーマにアニメーション映像で変幻自在なやりとりを行う。世界的に見ても斬新で刺激的なアプローチ。
スクラップ・ダイアリー●田名網敬一と相原信洋によるアニメーションによるドローイング・バトル。同一画面上に2人のドローイングが混在し複合されることで予期せぬ効果を期待した。(田名網敬一 相原信洋)
夏の視線-1942●メモリーズ(幼年期の情景)●『記憶は嘘をつく』(ジョン・コートル著・講談社)を読むと、人間の記憶とは、自分で考えるほど正確なものではな<、自分に都合のいいように、まるで川の流れのように変化してゆ<ものだと書かれている。ぼくはこの本を読んで、自分の価値観や願望の変化によって記憶も微妙に変化してゆくことを知って、驚いたり、不安になったり、安心したりしたのである。そんなあいまいな「記憶の断片」をアニメーションにしたのが『夏の視線―1942』と『メモリーズ』の2作品である。(田名網敬一)
GOLDFISH FETISH●映像作品やドローイングに20年にわたり断続的に登場する田名網敬一の重要なモティーフの一つである金魚がテーマ。
WHY Re-mix●1975年に制作された『WHY』は素材となる映像を印刷製版技術の行程を経てアニメートしたものである。2002年にデジタル・サンプリングされ、再解釈が加えられた。

ZONE
Still Movie
受付(入替制)
3回券2,000円/一般900円/会員600円

プログラムA ジャグラー <juggler>
かみそりとハンマー 倉圭宏/ビデオ/3分/2002
その先へ 能瀬大助/16ミリ/2分/2000
Still Movie 永田陽一/16ミリ/3分/1974
驚き盤 古川タク/16ミリ/5分/1975
Pulse 峰岸恵一/16ミリ/6分/1982
オランダ人の写真 居田伊佐雄/16ミリ/7分/1976
フィルム・ディスプレイ
瀬尾俊三/16ミリ/5分/1979
RAM 神崎愛子/8ミリ/3分/2001
New Impersonation 伊藤徳彦/8ミリ/5分/1983
Stripes 佐藤義尚/ビデオ/8分/1998
Slide 佐藤義尚/ビデオ/7分/1999
部屋/形態 石田尚志/16ミリ/7分/1999

プログラムB 人形使い <puppeteer>
生態模倣 下西要 /ビデオ/4分/1991
魚2 下西要 /ビデオ/4 分/1992
快動力REAL 保田克史 /ビデオ/6分/1998
放飼 武藤浩志 /ビデオ/7 分/2001
カラエナ 岩田勝巳+池田泰教/ビデオ/ 7分/ 2001
すべては沈黙の色 小瀬村真美 /ビデオ/13分/2001
Nami-Oto 島田剛/8ミリ/5分/2002
阿片譚 倉重哲二/8ミリ/14分/2000
U-SA-GUI 倉重哲二/ビデオ/13分/2001

プログラムC 観測者 <observer>
Roundscape Mix 中西義久/ビデオ/5 分/1998
Fade into White #2
五島一浩/ビデオ/11分/2000
Fade into White #3
五島一浩 /ビデオ/14分/2001
太陽風 水上弘/ビデオ/6分/2000
Ride the Light 岡本彰生/ビデオ/4分/2000
Snarl-Up!!! 岡本彰生 /ビデオ/8分/2001
蛾のいるところ 清家美佳 /ビデオ/6分/2001
Hierophanie 大門未希生/ビデオ/7分/2002
Tokio House 石田純章/16ミリ/7分/1990
Yellow Fish 相原信洋/16ミリ/5 分/1998
Wind 相原信洋/16ミリ/5分/2000

プログラムD 伊藤高志1
SPACY 16ミリ/10分/1981
BOX 16ミリ/8分/1982
THUNDER 16ミリ/5分/1982
DRILL 16ミリ/5分/1983
GHOST 16ミリ/6分/1984
GRIM 16ミリ/7分/1985
WALL 16ミリ/7分/1987
悪魔の回路図 16ミリ/7分/1988
ミイラの夢 16ミリ/5分/1989

プログラムE 伊藤高志2
12月のかくれんぼ ビデオ/8分/1993
THE MOON 16ミリ/7分/1994
ZONE 16ミリ/13分/1995
ギ・装置M 16ミリ/6分/1996
モノクローム・ヘッド 16ミリ/10分/1997
めまい 16ミリ/11分/2001
静かな一日 ビデオ/20分/2002

プログラムF 田名網敬一
優しい金曜日 田名網敬一/16ミリ/3分/1975
人工の楽園 田名網敬一/16ミリ/14分/1975
4・EYES 田名網敬一/16ミリ/9分/1975
闇の記憶・ 夢の陰影
田名網敬一/16ミリ/4分/2000
風の呼吸(アニメーションによる往復書簡)
田名網敬一+相原晋洋/16ミリ/4分/2001
スクラップ・ダイアリー
田名網敬一+相原晋洋/16ミリ/4分/2000
夏の視線-1942 田名網敬一/16ミリ/4分/2002
メモリーズ(幼年期の情景)
田名網敬一/16ミリ/4分/2002
GOLDFISH FETISH 田名網敬一/ビデオ/7分/2002
WHY Re-mix 田名網敬一/ビデオ/10分/2002


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