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冬の家族会議
「家族会議」ほど今日の家族像から遠く感じる言葉もないのではないかと思う。巷に聞く家族は物理的、情報的、精神的に"離散"している様子。家族会議の冬である。
そんな中、ここ数年の若い作家が描く家族をテーマにした作品に少し変化がでてきたようにみえた。一つはフィクションを大胆に導入して身近な対象を追うという点である。それも完全な脚色ドラマとも違って、フィクションを経由して本音をちらつかせたりする。もう一つは合目的性の欠如である。この作品を作りたい、という欲求が先にあるのではなく、この人と関わりたい、あるいは単に会話を成立させたいという、なんとも単純で切実な願いがモチベーションになっている。映像による多様なコミュニケーションが謳歌されている様にみえる中、一人カメラを持って、あるいはカメラを相手に託して、「これは映画の撮影である」というコードやルールが介在しないとコミニュケーションが成立しないという現実もまたある。(澤隆志)

作品コメント
幸せ蝙蝠●他人であれ、家族であれ、人はどれほどの感情を抑えて日々を暮らしているのでしょう。大切なことは、その繰り返しの日々の中で感情を抑えることを処世術だと思い込まないことです。時には感情をあらわにすることも、必要な気がします。(金丸裕美子)
次・どこ・行く?●父母の生き方を見ることで、これからの自分の生き方を考えてみるというような... 一番はじめに母親を撮影し始めてから完成までに4年以上かかりましたが、コンセプトに従って肉付けしていったのではなく、自分が生きたい時間を映画の中で試してみた、という感じです。ホープ・ドキュメンタリーとでも言えばいいのか... (白川敏弘/IFF2002カタログ"大賞作家インタビュー"より)
つち●ホームビデオのような現実味を追及し、大袈裟な演技や流暢なセリフなど一切ない、粗削りな日常風景。5才の男の子「つち」とシングルマザー「ほこ」の親子の絆はクレヨンで描いた落書きや、意味不明のいたずらで、更に深まるのです。(イラネナホシナ)
男のサービスエリア●自らの死に場所を求めて彷徨った父親の足跡を巡る娘の旅。母親、異母兄、伯母、遺体の第一発見者などのインタビューを交え、それまで知らなかった、死に至るまでの父親の後半生に迫る。行き深い東北から南洋のパラオまで、風景から浮かび上がってくるものはその場に確かに存在した一人の人間としての父親の姿
以毒制毒宴●ごくありふれた家族のお話。それをごく主観的に撮ってみました。母は結局働き続けるし、僕は結局映画を撮り続ける。バカなひとたちの業は深い。笑い飛ばしたくても笑い飛ばせないもどかしさ。(二宮正樹)
団地酒●自分の家族の形、父親が働かず絵を描き母親が働いているという形に、幼いころから違和感や不満を抱いてきました。でも今回、作品のために母親に話を聞き、自分が生まれる前から父親も母親も生まれていて、出会って結婚し、子供を3人も育てて今日に至っている。当然の事だけど、そんな事実を突きつけられました。この作品を撮る事になって、撮影以前にあった自分の両親に対する違和感や不満は違うものになったと思います。素晴らしいとまではいかないけれど、父親が絵を描き母親が働くという事が、自分の家族の当たり前の形だということです。自分がこの両親から生まれてきたということを強く感じました。父親の作ったどぶろくは2週間かけて発酵するけれど、自分の家族はまだまだ発酵している最中です。そんな発酵中の大野家を記録しました。(大野聡司)
次・どこ・行く?
団地酒
受付(各回入替制)
当日900円/会員600円/3回券2000円
※レクチャー「コミュニケーションのためのカメラ」
講師:かわなかのぶひろ
チケットの半券で参加できます。

■Aプログラム
幸せ蝙蝠 金丸裕美子/ビデオ/43分/2001
かげろう追い 松井ゆみほ/ビデオ/18分/2002
次・どこ・行く? 白川敏弘/ビデオ/43分/2001

■Bプログラム
Father Complex 佐俣由美/ビデオ/27分/2002
つち イラネナホシナ/ビデオ/30分/1999
男のサービスエリア 樋渡麻実子/ビデオ/41分/2000

■Cプログラム
以毒制毒宴 二宮正樹/8ミリ/25分/2000
君の1秒は僕が決める 宮川真一/8ミリ/14分/2001
団地酒 大野聡司/ビデオ/49分/2001