どこか森のむこうの徴に
「兆」についての6つの映像
「映像表現の醍醐味は、見えるもので見えないものを表すこと」とは、大方異論のないところだろう。降霊術に狂喜した写真家の時代から、現代のデジタルエフェクト熱まで、みえないものへの変わらない情熱は、奇妙な作品の原動力にもなり、稀に技術革新にも寄与する。 このプログラムでは、「予兆」や「気配」に満ちた3人の若手女性作家によるビデオ作品を上映する。目に見えて革新的な映像の加工もなければ、複雑なプロットがある話でもないが、平べったいmini-DVの画像の隙間に「ふと」した引っ掛かりを感じてしまう。意図的かどうか判別し難いが、注視すべき隙を与えているともいえる。(澤隆志)
"WHERE WERE YOU?"
女は待ち人に会えずじまい。坂の上の部屋で、今日は参鶏湯を作って待つ。誰を?
男は旅から戻る。「ただいま」と声をかける相手は消えたのか、始めからいなかったのか?
もしかすると全ては少年たちの仕組んだ罠だったのか。
日常のすぐそばにある”彼方”をキャッチする作者のアンテナに注目。
渡辺あい Ai Watanabe
1984年生まれ。東京芸術大学先端芸術表現科卒業。主な作品:『Flying to』『WAVE』『"WHERE WERE YOU?"』
森の向こう
すっかり落葉した広大な森にひとり、ポーズをとり続ける異形のダンサー。動きの排除された空間で、視線は、ダンサーの身体のブレに否応なく誘導される。これは観客のポージング。巧みに編集された映像パフォーマンス作品。「持続すること」「記録すること」の境目がかいま見える。
小原礼 Aya Ohara
1984年生まれ。多摩美術大学 映像演劇学科 4年在学中。主な作品:『ハリバン』2006 『counter sign』2006 『森のむこう』2007
sign
優れたアート・ドキュメントであるこの作品は、作者自身のオブジェやドローイング、パフォーマンスが繰り広げるドラマとしても機能する。スペース(空間)の中の部品としての身体、そしてスペース(器)としての身体。これらを記憶させるオブジェの物語。今回は映画に登場する作品も一部展示する。
石塚つばさ Tsubasa Ishitsuka
1985年、茨城県生まれ。東京芸術大学美術学部先端芸術表現科在籍。主な上映・展覧会に2007年『Sound and vision 特別展示 〜音や光の申し子たち
〜』、2006年『取手アートプロジェクト2006』、『映像の身体、身体の映像』
website
どこか森のむこうの徴に
Flying to 渡辺あい/ビデオ/7分/2004
"WHERE WERE YOU?" 渡辺あい/ビデオ/14分/2007
ハリバン 小原礼/ビデオ/20分/2006
森のむこう 小原礼/ビデオ/11分/2007
sign 石塚つばさ/ビデオ/17分/2006
遠い耳鳴り、夜の縁取り 石塚つばさ/ビデオ/5分/2007