- 『内と外』予告篇
『内と外』
マウリシオ・ノベーロ・ハルケ/2011年/日本・メキシコ/97分/デジタル
『内と外』は11人の日本のアーティストの視点を通して、現代日本における美学の一端を浮かび上がらせるドキュメンタリー映画である。建築家・写真家・音楽家・ダンサー・画家・彫刻家・アニメーション作家・パフォーマー・インスタレーション作家・漫画家らが、空間・言語・現代の神話にまつわる彼らの制作過程を見せ、観客が日本社会のパノラミックな視点を得るための手助けをしてくれる。
出演者:
安藤忠雄・中嶋夏・畠山直哉・中ハシ克シゲ・ヤノベケンジ・会田誠・永岡大輔・大巻伸嗣・長明日香・稲垣智子・八戸香太郎
監督コメント
「内と外」は日本語で「内部と外部」を意味する言葉である。しかしその言葉の日本社会で意味することはずっと深い。
この「内部と外部」というコンセプトは、個人とその周りの環境、内部の自我と外部の存在のメタファーである。「内」は、家の中を意味し、存在のコアがあるとされ、「外」は家の外、「他者」を意味する。「内と外」という概念は、日本の内部に根を下ろしている。
私の経験では、「家の外」からやってきた人間にとって、内部で日本社会の本質にアプローチするには常に謎がつきまとう。しかし、映像作家として私はアーティストと作品を作ることに決めた。なぜなら彼らの感覚、そして強迫観念までもが日本と言う家に根ざしている精神性について多く語ってくれるだろうと考えたからである。言語としてのアートこそが、この精神性に対するもっとも深いつながりであった。
「内と外」は単なる空間的な関係性を意味するのではなく、つまり分断された空間を意味するのではない。「内と外」は境界に存在する領域で、内部に生まれやがて外側に広がっていくものである。
アーティストとして、日本的なものの考え方についての私の質問は、影に隠れたままだと気付いた。日本の言語、空間の流動的な捉え方、神話、宗教、セクシャリティー、歴史、禅、哲学、美学はさらに影に隠れてしまった。
まさに、隠された美という概念が、私を日本的な官能性の謎に近づけてくれたのである。アーティストたちの目を通して、この謎に向かって旅をするというアイデアが、このドキュメンタリー映画を形作った。私は、静かなポートレートの星座を、日本の精神性のもとで作ろうと思った。内部でも外部でもなく、「内と外」で。