次代を担う若手映像作家特集プログラム
イメージフォーラム・フェスティバル2019一般公募部門「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」の1次選考通過作品を中心に、日本で制作された、アニメーション、ドキュメンタリー、ドラマなど多様なジャンルと、そのジャンルをまたぐ新しいアプローチの新作を2プログラムで上映します。 1989年から続く「ヤング・パーススペクティヴ」は、常に新しい作家を紹介し、次世代の映像を展望してきました。 これまで紹介された作家は、美術・映像業界など様々な分野で活躍を続けています。
上映プログラム
プログラムA 7作品102分
ユメみばなにうつつ 増田優太/デジタル/9分/2019
透明な世界 村岡由梨/デジタル/7分/2019
冬眠明け 稲葉雄介/デジタル/10分/2019
夜になった雪のはなし 幸洋子/デジタル/6分/2018
コトバメシ 伊藤優/デジタル/6分/2019
午後3時の悪魔 池田健太/デジタル/25分/2018
FARM 山内健太郎/デジタル/39分/2019
プログラムB 6作品92分
ヒヤシンス湖 1.まなざしに虹 ハシモトミカ/デジタル/10分/2018
ワンダフル千鳥足 in ワンダーランド 岡田詩歌/デジタル/2分/2019
塾帰り 飯田千里/デジタル/3分/2019
ストレンジ ベルズ 有川滋男/デジタル/9分/2019
うめぼしパトロール ささきえり/デジタル/4分/2019
エルムンドペルディード 峯達哉/デジタル/64分/2019
作者コメント
ユメみばなにうつつ
富士登山の体験をもとにした、セルフドキュメンタリーアニメーション。地上と地続きにして繋がった富士山の境界。そしてそこに横たわる距離感について描いた。
透明な世界
2018年現在の「私」と「世界/社会」の関係性を表した、私と娘たちのポートレート。これは私の内部と外部で起こる激しい二項対立の物語。「個」を貫き通せば、それはやがて「世界」となる。それは、私が創作活動を通して目指す地平でもあり、この世界の有り様も表しているのではないだろうか。
冬眠明け
春が来て、部屋に暖かな日が差す。ふと目をやった窓の外に、不吉な幻。近所の広い墓地は、冬の名残の冷たい空気に満ちている。奥に奥に歩いていく内にだんだんと日が暮れていく。夜風──。冬の底から春の入り口へ、若い詩人の静かな一日の話。
夜になった雪のはなし
ある日、雪は、やがて溶けてしまう自分の身に危険を感じ、ミミズになった。ミミズは地上の世界に憧れて、木になった。憧れや強さを求めて次々に姿を変えていく雪は、いつの日か、かつての自分の姿を思い出す。
コトバメシ
トントン、グツグツ、料理の音をオノマトペ(言葉)で表現したドローイングアニメーション作品。日本人だから表現できる・理解できる言葉の面白さについて追求した作品。
午後3時の悪魔
よく見知った道をいつもと違う時間帯に歩くと、見知らぬ道のように感じることはないでしょうか。同じ道のようだけど、聞こえてくる音、すれ違う人、茂みの向こう、その角の奥……何かが少しずつ違う。本作では平凡な日常を生きる主人公が、そのような隣り合わせの見知らぬ世界に引き込まれてしまうさまを描いています。
FARM
「山の景色を見た。それは夢だった」。夢に誘われるように僕はある牧場へと赴く。草を食み続けるヤギ、完全管理されたウシ、臆病なヒツジ、親切な牧場長...。様々な出会いを通して語られる話を胸に街に戻った僕はある夢を抱く――。牧場とはなんだ。作者がパーソナリティとなり彼の日常の前に現れた景色を紹介するラジオ映画。
ヒヤシンス湖 1.まなざしに虹
頬杖をつく鉢植えのペチュニア。宙を舞う腕は結んでいたダイアリーを紐解いた。あふれる押し花や実や虫を…喉を詰まらせて味わう花カマキリ。夜明け前の部屋ですべては少女eyeの分身のよう。
肌を灼く光が心を通過したら 私は分光して壁に美しい色を映したい
まなざしの光に出会って 虹がうまれる まつ毛の隙間に
ワンダフル千鳥足 in ワンダーランド
ある日失恋した私は、そのまま帰ることなどできず、歩くと1時間以上かかる家まで徒歩で帰ることにした。買った酒を飲みながら。
落語の技法の「道中付け」とポップカルチャーを融合して、酒と街に呑まれながら東京というワンダーランドを散策する自分を追うセルフドキュメンタリー作品。
塾帰り
黎明期のカートゥーンを現在の技術、現代日本の風俗でオマージュする。ジャズではなく、マウンテンミュージックをルーツにするブルーグラスの演奏に乗せて。「アニメ」とは別に本邦にありえたかもしれない、寺田寅彦が評した「人工映画」を再試行する試み。
ストレンジ ベルズ
スコップを引きずりながらサンダルで砂地を歩く男性。穴を掘り、黒い液体を注ぐ。
(再)解釈シリーズでは、非現実的で非生産的な架空の仕事を創造します。物や行為の意味や目的をシフトさせることで、それらに対する一般的な認識を意図的に混乱させ、いくつもの解釈へと見る者の想像力を喚起します。そして様々な解釈がなされる度に、この架空の仕事そのものが更新されていきます。
うめぼしパトロール
とことこてくてく。あそこでいつもの犬が吠えている。あ、猫かと思ったらビニール袋だ。おじさんがなんだかすごい笑っていた。この街のことはよく知っているけど、知らないことだらけだ。うめぼしのようなパトロール。しょぼくて素朴なでも味わい深い散歩という意味です。何も起こらなくても楽しくて風通しの良い作品を目指しました。
エルムンドペルディード
『チュンゲリア』(PFFアワード2015入選)、『レトロ』(ヤング・パースペクティヴ2017選出)に続いて3本目に作った自主映画で、怪獣映画へのオマージュ/パロディを散りばめながら、カットバック、モンタージュ、合成等の技法をミニマルな方向で脱構築的に突き詰め、現代におけるフィクション映画の可能性を模索した作品。
- ストレンジ ベルズ
- うめぼしパトロール
- エルムンドペルディード