国立映画アーカイブで開催中の「アンソロジー・フィルムアーカイブス―アメリカ実験映画の地平へ」に合わせ、イメージフォーラム所蔵作品の中から、関連するアメリカ実験映画史に残る重要作を上映。
上映プログラム
ロスト・ロスト・ロスト ジョナス・メカス / 16ミリ(デジタル上映)/ 180分 / 1975
「私がこの全6リールのフィルムを通じて描写しようとした時期は、絶望の時期、思い出を作り出すために、この新しい地に根を張ろうとする、絶望的な試みの時期だった。この苦痛に満ちた6リールのフィルムを通して、私は一人の亡命者の感情、この時期の私達の感情を描写しようと試みたのだった。この映画は、「ロスト・ロスト・ロスト」という名前をもっている。これは私と弟が、1949年に作ろうとしていた、もし完成していれば、そのころの私達の心のありようを暗示することになっただろう、1本の映画に付けようとしていたタイトルだった。この映画は、自らの生まれた国を忘れることができず、しかしながら、まだ新しい国を「獲得して」いない「亡命者」の心の状態を、描写したものなのだ。「リール6」は移り変わりの時期である。私たちは息をつき、いくらかの幸福な瞬間というものを見つけ始めているかのようだ。新しい生活が始まったのだ」(ジョナス・メカス)
ジョナス・メカス
1922年リトアニア生まれ。ソ連、次いでナチス・ドイツがリトアニアを占領。強制収容所に送られるが、45年に収容所を脱走、難民キャンプを転々とし、49年アにメリカに亡命。16ミリカメラで自分の周りの日常を日記のように撮り始める。65年『営倉』がヴェネツィア映画祭で最優秀賞受賞。「フィルム・カルチャー」誌刊行、フィルム・メーカーズ・コープ設立。1970年にNYにアンソロジー・フィルム・アーカイヴズを設立。2019年死去。
弥撒(ミサ)- ダコタ・スー族のために ブルース・ベイリー / 16ミリ / 24分 / 1963-64
映画は短い導入部から始まる。”私はもう生きていけない。母よ、あなたも悲しむことだろう。”シッティング・ブル、たくましきスー族の酋長。路上で死んでいる孤独な人物への喝采。聖火。カメラの中で作り上げられた、露出過剰の長いセクション。キリエ(主に憐れみを乞う祈りの歌)。カリフォルニアのヴィナのトラピスト修道院で録音されたグレゴリオ聖歌を伴ってサンフランシスコの橋を渡っていくオートバイ。いくつかのセクションに聖書の使徒書簡(The Epistle)が入る。この作品の中心部で映画は次第に常軌を逸していき、テレビや映画のスクリーンから直接撮影された画面となる。その間、”ミサ”の音楽が高くなったり低くなったりする。グロリア(栄光の賛歌)。サイレンの音とベイ・ブリッジを進みトンネルの中に消える33年型キャデラックの短いシーン。最後のセクション”聖餐”は第2の聖歌への光と形の行列の中で奉献歌とともに始まる。導入部の未明の人物が再び現われ、路上の上で死んでいる。その体は神聖なものとなり、最後の聖歌に伴われて、無関心な孤独な人々のなかを運び去られる。伝統的なミサとは生の賛美である。ここにミサの形式と死のテーマの間の矛盾がある。この映画は、ミサを発展させた文明が消し去った宗教的な人々に捧げられる。
ブルース・ベイリー
1931年、サウスダコタ州アバディーン生まれ。1961年にサンフランシスコでキャニオン・シネマを創設。また、1961年には友人であり映像作家のチック・ストランドらと共にサンフランシスコ・シネマテークを設立した。代表作『カストロ・ストリート』が1992年にアメリカ国立フィルム登録簿に選定されている。2020年死去。
ジェロームの時間 ナサニエル・ドースキー / 16ミリ / 50分 / 1982
この作品は、スタイルとしては一種の日記映画であるが、単に被写体を再現的に映し出すたぐいの日記ではない。つまり日記を身辺雑記風に描くのではなく、日々のうつろいをフィルムにおける創造とかかわらせているのである。作者はあらゆる被写体をカメラで撮るばかりではなく、カメラで創ろうとしているのだ。ドースキィの作品には、幸運と一体になった輝きが随所に見受けられる。最初はそうした瞬間を、ただ美しいと受容することに夢中で過ぎてしまうけれど、やがてそれが単にラッキーであるだけではないということに気づかされる。山野を1コマ撮りで捉えたり、氷原をクローズアップで捉えたり、街をバルブ撮影で捉えたり、カメラ側の創造も、実に丹念に加えられているのである。”映画は撮らされたものであると同時に、創造されたものでなければならない”という思いをつくづく実感させられる作品だった。(かわなかのぶひろ)
ナサニエル・ドースキー
1943年ニューヨーク生まれ。63年より商業映画の世界で働く傍ら、インディペンデントな創作活動を続ける。71年以来西海岸へ移り、撮影監督、編集、演出と幅広く活動。『ジェロームの時間』もまたアメリカ国立フィルム登録簿に選定されている。
ロンサム・カウボーイ アンディ・ウォーホル / 16ミリ / 110分 / 1967
出演:ヴィヴァ、ジョー・ダレッサンドロ、テイラー・ミード、ルイス・ウォルドロン、エリック・エマーソン、トム・ホンパーツ他
ウォーホル初のロケーション映画で最後の監督作品。役者たちは西部劇ジャンルのクリシェをアイロニカルに演じ、メロドラマ的な想像に満ちた会話を通じてキャンプ感覚を全面に押し出した。ヴィヴァとテイラー・ミードがゴーストタウンで無法者のカウボーイの一団と会う。彼女はカウボーイに犯されそうになるが、むしろ男たちを誘惑する。「ポール・モリセイによるウォーホル映画」の常連で、ボロフチクの『夜明けのマルジュ』やセルジュ・ゲンズブールの『ジュテーム・モワ・ノン・プリュ』にも出演していた美少年ジョー・ダレッサンドロのデビュー作でもある。なお、この映画の撮影中、ウォーホルとその一団はFBIによって厳重に監視されていた。
アンディ・ウォーホル
1928年ピッツバーグ生まれ。ポップアートの旗手として知られるが、1963年から68年にかけて映画作品を多数制作。アンダーグラウンド映画シーンに多大な影響を及ぼした。1987年死去。



