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2005/1/9,1/16

詩集「ディヴァン」
この映画は次の5部からなるアンソロジー・フィルムであり、『ヒュニンゲン』は独立しても上映される。1部『スン・ア・ルム』(16分)2部『アルテルナティム』(15分)3部『カンティレーネ』(17分)4部『モト』(16分)5部『ヒュニンゲン』(21分)
イスラム教徒の有名な作品やゲーテの「西東詩集」を想起させる題名のこの作品は一種の詩的なアルマナック<ごった煮>である。そこにはネケスの初期作品を思い出させる習作や『T-WO-MEN』の未使用フィルムや、全く新しい実験を試みたフィルムが詰め込まれ、一見無秩序なスケッチブックの中でネケスらしい要素が全体にちりばめられている。

ヒュニンゲンについて
タイトルはスウェーデン語で”密の屋根”を意味する。映画は風景の多重露出のシーンから始まり、やがて一軒の家と男女が登場する。”窓”のイメージを中心に、即興的なカメラワークが混ざり合い、ルネ・マグリットの絵画を思わせるシュルレアリスティックなイメージを生み出す。時にこっけいであり、時に神秘的なこの作品は、時間の中で移ろいゆく自然や人間を描き出しながら、生きる事、住む事をめぐる美しいエッセイを展開して行く。

T-WO-MENについて
この映画のタイトルの文字の区切りは、映画の”水平的な読みの可能性”を指している。この映画の最もささやかな情報は、受容者の心の中で2つの別々の映像が1つに合わさる事である。フレームAとフレームBがソーマトロープの効果で重なりあい、映画的情報を伝達する最小単位である”運動素”を形成する。映画の言語をかたろうとする者は、この”運動素”の要素かそれらの集合かを分析せねばならない。”運動素”はフレームとの差異によって決定される。差異が全くなければ静止のイリュージョンが生まれ、少しずつ異なると動きが生じ、そして全く異なるといろいろな形の合体というイリュージョンが現れる。この作品の1、2、4部では映画の”水平的”読み、3、5部では”水平的及び垂直的読み”の例を示した。
(ヴェルナー・ネケス、『T-WO-MEN』の美学的構成についてのコメント)

ヴェルナー・ネケス●1944年生まれ。ドイツを代表する実験映画作家であり、「映画前史」の研究家、コレクターの第一人者。20年以上にわたって映画前史に関するさまざまなオブジェをコレクション、それを集成した当作品『フィルム・ビフォー・フィルム』を85年に発表。他、50本余りの長短編を制作。代表作に『ジュム・ジュム』(67)、『T-WO-MEN』(72)、『ユリシーズ』(82)などがある。

ディヴァン
T-WO-MEN
受付(入替無)
当日900円/会員600円/2回券1500円

上映作品
Aプログラム

詩集「ディヴァン」
ヴェルナー・ネケス/16ミリ/60分/1973

Bプログラム
T-WO-MEN
ヴェルナー・ネケス/16ミリ/90分/1972