VLDK 部屋の時間
2000年に上映したプログラム「部屋の時間」のアップデート版。一人、部屋にたたずんで、"心にうつりゆく由なし ごとを、そこはかとなく"撮りつらねる3人の4物件。それぞれの作品はワンルームとおぼしき部屋を舞台にしているだけではなく、「その部屋」で繰り広げられることが大きな意味を持ってくる。過剰に整頓し、常にカメラ目線を意識した京都(空の箱)や東京(夏目)の部屋だったり、普段は目を背けたくなるような汚物と、その名前とのズレによるコンストラクションだったり(凸凹)、まったりと最悪を受け入れるパフォーマンスの舞台だったり(ハーモニー)... 感覚が凪いだとき、「部屋」という内側に向いた自分の似姿に、カメラを向けてみる。(澤隆志)
空の箱
ラジオから聴き覚えた歌が流れる。Tシャツの汗滲みは乾いてゆき、窓の外を不意に鳥が飛び去り、今日もいつのまにか朝が来ている。山が、海が、都会が嫌い でも、目が開いている限り続いてゆく真正面向きの世界があり、格別面白いことがなくても、少しばかりの気がかりで私はのうのうと生きてゆける、そんな図々 しさを受け止めるように映画を撮ってみたい。あてどない一日を舞台にした私映画。題名は部屋、身体、カメラの比喩。イメージフォーラム・フェスティバル2007一般公募部門奨励賞受賞。
祢津悠紀
1983年長野生まれ。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科卒業。東京都在住。<<撮影時の物件:リバーサイド高野405号>>
凸凹
壁、電話、水道、お風呂、部屋、光、外・・・部屋。部屋、一人。
図書館に行くはずが、まだ部屋。ゴミを捨てるはずが、まだ部屋。誰だったかに会いに行くはずが、まだ部屋。お昼の12時、部屋。夕方、まだ部屋。夜も、部屋。一日中、部屋。
子供の頃からふんばるのとお尻をふくのがめんどくさいばかりに便秘持ちになりました。。<<当時の物件:希望恵ハイツ203号>>
白山恵子
1983年埼玉県志木市生まれ。イメージフォーラム付属映像研究所第27期卒業。
ハーモニー
部屋で酒を飲みながら外をながめる男。屋上にテーブルを持ち込み、酒を飲む男。空から来た全身タイツ男。外を歩く男。それぞれおかしな人々が絡み合い、おかしなリアクションとおかしな会話が生まれ、最悪な輝きを放つ。
「なんと最悪に輝いているんだ」これはアメリカの漫画家ロバート・クラムのドキュメンタリー映画のキーワードです。この言葉にとても感銘を受け、「最悪の輝き」を表現出来ればと思いこの映画を制作しました。少々しんどい時に、この映画のどこかを思い出してニヤリとしてもらえれば幸いです。
小谷卓也
短編映画「Jean-Luc Modard」(2000)から本格的に映像制作を始め、短編映画を軸に映像作品を製作発表。2007年、映像制作ユニット「moda」を立ち上げ製作を継続中。「moda」のホームページにて、制作した映像作品がご覧いただけます。
<<現在の物件:TOTOビル201号室>>
夏目
今ではほとんど野口だが、私は夏目のほうが良かったので残念だ。「夏目の千円札」を銀行券史上に残る傑作だと思うのは私だけだろうか。軽薄にして瀟酒、奔 放にして臆病な夏目の眼の色は「千円札」という存在の猥雑さをそのまま表現しているようだ。私は夏目の千円札みたいな映画を作りたい。昼過ぎから夕方 までの私映画。昼食と夕食に挟まれたこの時間帯は一日のなかでもとりわけ無為で、だから何をやってもあてどなく見えた。上映会『EXPO- EQvol.2』(@京都造形芸大)のための撮り下ろし、東京では初上映。<<現在の物件:メゾン坂下208号室>>
プログラム
空の箱 祢津悠紀/ビデオ/38分/2006
凸凹 白山恵子/8ミリ/10分/2005
ハーモニー 小谷卓也/ビデオ/21分/2005
夏目 祢津悠紀/ビデオ/18分/2007