- 『コンシューミング・スピリッツ』予告篇
アメリカの鬼才、クリス・サリバンのすべて
新しい国際アニメーション・フェスティバルとして注目された「GEORAMA2014」の東京会場で最も話題となった長編アニメーション『コンシューミング・スピリッツ』と、同作家の初期短編作を上映します。 さらに制作者である鬼才クリス・サリバンがアメリカより来日し、トークショーを開催!
7/26 司会:吉田アミ 通訳:金子遊
7/27 司会:土居伸彰 通訳:金子遊
プログラムA(長編)『コンシューミング・スピリッツ 』
1作品131分
切り絵、ドローイング、立体ジオラマと複数の手法を織り交ぜた2時間超のアニメーション大作『コンシューミング・スピリッツ』。アメリカ郊外に暮らす人々の悲哀と希望を描きだすこの作品は、GEORAMA2014東京会場「国内未公開長編アニメーションショーケース」で最大の話題となった。
『コンシューミング・スピリッツ』Consuming Spirits
クリス・サリバン/2012年/アメリカ/131分/ブルーレイ
アメリカ郊外の田舎町マグソンに暮らす42歳のジェンシャン・ヴィオレット、38歳のヴィクター・ブルー、64歳のアール・グレイ。当初は関係ないように思えた3人は、不吉な社会福祉施設、里親、ロマンス、憎悪を巻き込み、いつしか悲劇の物語に巻き込まれていく。隠されるべき家族の秘密、明らかにされるべきもの。ある夜の飲酒運転と自動車事故が引き金に、記憶の貯蔵庫が開け放たれ、3人はそれぞれ、癒され、そして傷つく。アメリカの鬼才クリス・サリバンが15年以上の歳月をかけて完成させた2時間超の長編アニメーション。
プログラムB(短編)「クリス・サリバン短編作品」
4作品45分
『エイント・ミスビヘイヴィン』Ain't Misbehavin'
クリス・サリバン/1981年/アメリカ/5分/ブルーレイ
孤独な男の心は折り重なる映像と声の戦場となる。昼、家で数々の行動をする(料理、食事、読書、執筆、入浴…)男の心に、戦争と死のイメージが入り込む。作品の終盤、男は浴槽から現れ、部屋へと入る。すると部屋には複数の自分に占拠されている。自分が拡張してしまうこと、それを恐れるのは、果たして狂ったことなのだろうか?
『ザ・ビホールダー』The Beholder
クリス・サリバン/1983年/アメリカ/9分/ブルーレイ
街の通りで男が騒ぐ。神、悪魔、悔恨の情について。その近くでは人々が混雑するレストランに腰掛ける。周囲の環境から隔絶され、食事し、おしゃべりし、空想に耽る。しかしそこには情熱はない。ウェイトレスはスペシャル料理のメニューを無関心そうに暗唱する。二人の男たちがトイレで文字通り「すれ違う」。彼らにはシェルターも食べ物もある。でも、生きていない。レストランは安心の毛布だ。街の外で騒ぐ、狂って、退屈で、囚われた存在から身を隠す場所だ。だが、自分の生きるべき生を享受しているのは、他でもないその男だけなのだ。
『マスター・オブ・セレモニー』Master of Ceremonies
クリス・サリバン/1986年/アメリカ/8分/ブルーレイ
家が燃え、居住者たちは死に絶える。炎が家中を駆け巡り、脱出しようとする家族の試みは不毛に終わる。ドア、壁、モノ、すべてが邪魔をする。死者たちが魂へと変容し、家の声が反響する。魂が行くべき場所へと向かうなか、死神はちょっとしたボードビル・ショーを催し、死者たちを鼓舞しようと決める。我々に静寂と沈黙をもたらしてくれるのは、ただ死のみである。
『イカロスの失墜の風景』Landscape with the Fall of Icarus
クリス・サリバン/1992年/アメリカ/23分/ブルーレイ
ピーター・ブリューゲルの絵画「イカロスの失墜の光景」では、神=イカロスは誰にも気づかれぬままに地面に墜落する。農民たちは農作業を続け、船は運行する。ウィリアム・カルロス・ウィリアムズは同名の詩に書いている・・・かつて全能の神は「気づかれぬままに海へと墜ちる」。この映画におけるイカロスは、年老いた司祭のレイだ。彼は狂気に沈み、説教の参列者は次第に減っていく。調子の悪くなるレイを、社会は見過ごしていく。作品の最後、レイはバーで一人聖歌を歌う。「雪を分け足跡を編む」。彼を囲むのは悪夢で彼を苦しめた者たちだが、彼らはもはや害を加えない。レイは平穏を手に入れているのだ。バーはレイにとっての新たな教会、聖域なのだ。レイがそのバーを去るとき、足跡を除いて彼は透明だ。安息の場所を離れた彼は、「気づかれぬままに海へと墜ちる」。
クリス・サリバン Chris Sullivan
ピッツバーグの森に囲まれた丘で10人の兄弟たちとともに生まれ育ったクリス・サリバンは、30年以上にわたって実験的な映画を作り続け、各地の映画祭や美術館で上映を行なってきた。現在はシカゴに住み、作品制作の傍らシカゴ美術館附属美術大学で教鞭を執っている。監督、脚本、サウンドデザイン、ヘッドアニメーターをサリバン自身が務めた『コンシューミング・スピリッツ』は、構想に3年、制作に12年、計15年の歳月をかけて完成した。