作品案内

〈特集上映〉オーストリア映画週間2024

上映日程: 6月29日〜7月5日

オーストリア映画週間2024 Austrian Film Week
Our Very Eye 揺るぎなき視線


“芸術の都”ウィーンを首都に抱く、中欧のオーストリア。クラシック音楽や絵画などの伝統的芸術の地として知られる国だが、ミヒャエル・ハネケやウルリヒ・ザイドルに代表される、現代で最も果敢でアヴァンギャルドな映画を脈々と生み出してきた歴史がある。こうした90年代以降の「オーストリア・ニューウェーブ」的状況の申し子とも言えるジェシカ・ハウスナーやヴェロニカ・フランツといった今や国を代表する作家たち。加えて世界中で高い評価を得るルート・ベッカーマンやニコラウス・ゲイハルターといったドキュメンタリー作家、そして若手の要注目作家たちによる、なんと全て日本初公開プレミア(!!)作品のセレクション7本が集結。この機会にぜひご覧ください!

[A]『クラブゼロ』 Club Zero
監督・脚本:ジェシカ・ハウスナー(『リトル・ジョー』『ルルドの泉で』)、脚本:ジェラルディン・バジャール、撮影:マルティン・ゲシュラハト(『リトル・ジョー』)、編集:カリーナ・レスラー、作曲:マーカス・ビンダー、衣装:ターニャ・ハウスナー、出演:ミア・ワシコウスカ(『アリス・イン・ワンダーランド』)他
2023年カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
2023年ヨーロッパ映画賞最優秀音楽賞受賞作品
110分/オーストリア・イギリス・ドイツ・フランス・デンマーク・カタール/2023年
配給:クロックワークス 2024年公開予定
*日本語字幕付き English with Japanese subtitles
“クラブゼロへ ようこそ”。ホラー?喜劇?ジェシカ・ハウスナーの人間社会に対する透徹した視線が際立つ、不安に満ちたサタイア。
裕福なインターナショナル・スクールに栄養学のノヴァク先生が新任としてやってくる。“意識的に食べる”ことの大事さを、優秀だが無垢な生徒たちに教えこむ先生。大量消費主義がいかに地球と人間の体を破壊しているか。だからこそと“食べる量を少なくすること”を勧められた生徒たち。両親たちの心配をよそにその教えにのめり込んで行く…。ミヒャエル・ハネケに師事した筋金入りの真っ黒なユーモアで観るものを蹂躙するハウスナーの野心に満ちた作品。

[B]『デビルズ・バス』(仮題) Devil’s Bath
監督:ヴェロニカ・フランツ(『グッドナイト・マミー』)+セヴリン・フィアラ、製作:ウルリヒ・ザイドル(『サファリ』、『パラダイス3部作』)、撮影:マルティン・ゲシュラハト(『リトル・ジョー』『クラブゼロ』)、編集:ミヒャエル・パルム、音楽:Soap & Skin(アーニャ・プラシュク)衣装:ターニャ・ハウスナー(『クラブゼロ』)、出演:アーニャ・プラシュク、ダーヴィド・シャイト、マリア・ホーフステッター(『パラダイス:神』)
121分/オーストリア・ドイツ/2024年
配給:クロックワークス 2025年公開予定
*日本語字幕付き German with Japanese subtitles
“私の狂った妄想が世界に毒を盛ったのです…。”声なきまま歴史に葬られてきた女たちの視線を通し、「暗黒の中世」の血塗られたタブーを限りなくダークに描くグロテスクなサイコドラマ。
1750年、オーストリア北部。処刑された女が、見せしめのために断崖に晒されている。それを哀れみの目で見つめる信心深いアグネス。新婚の彼女は夫との関係に悩んでいた。農村の重労働と周りからの視線に押し潰され、彼女は呪物に頼り、やがて現世から幽離していく。追い詰められた彼女に残された出口とは…?鬼才・ウルリヒ・ザイドルの脚本家でもあるヴェロニカ・フランツの長編最新作。2024年ベルリン国際映画祭銀熊賞(芸術貢献賞)受賞。

[C]『我来たり、我見たり、我勝利せり』(仮題) Veni Vidi Vici
監督:ダニエル・へースル+ユリア・ニーマン、製作:ウルリヒ・ザイドル(『サファリ』、『パラダイス3部作』)、撮影:ゲラルト・ケルクレッツ、音楽:マヌエル・リーグラー、出演:ローレンス・ルップ、ウルシナ・ラルディ(『白いリボン』)、オリビア・ゴシュラー他
86分/オーストリア/2024年
2024年サンダンス映画祭出品作品
配給:ハーク 2025年公開予定
*日本語字幕付き German with Japanese and English subtitles
“破壊こそクリエイティブ!” 資本主義の終末的世界を極度にシニカルなユーモアで描き、本年のサンダンス映画祭で話題を呼んだセンセーショナルな問題作。
起業家として億万長者になり上がり、幸福な充実した人生を送るメイナード家。一家の長アモンは、趣味のハンティングに情熱を傾けている。アモンがハントするのは動物ではない。莫大な富を抱えた一家は何だって狩る事が許されるのだ…。「ユーモアは危険な時に最高に力を発揮する」という信念を持つ気鋭の監督デュオが、観る者に笑いと怒りを同時に発現させる。

[D]『無用物』 Matter Out of Place
監督・撮影:ニコラウス・ゲイハルター、編集:サミラ・ガレマニ、ミヒャエル・パルム
105分/オーストリア/2022年
集め、切り刻み、燃やし、埋める。膨大に生まれる廃棄物をコントロールしようとする、人類の終わりの見えないシジフォス的営み。大量ゴミ処理現場を巨大なスケールで捉えるニコラウス・ゲイハルターのドキュメンタリー最新作。
2023年ロカルノ国際映画祭“緑の豹”賞受賞作品
*日本語字幕付き German with Japanese and English subtitles
大ヒット作品『いのちの食べかた』でお馴染みとなったタブロー的ショットの配置で、スイス・アルプスの山頂、ギリシャやアルバニアの海辺、オーストリアの巨大焼却炉、モルディブの海底やネヴァダの砂漠など、普段人の目の届かない場所で営まれている大量のゴミ処理の様子を、オブザベーショナル・ドキュメンタリーの巨匠ゲイハルターが記録していく。その環境学的・人類学的なアプローチが高い評価を得てロカルノ国際映画祭では“緑の豹”賞を受賞した。

[E]『ウィーン10区、ファヴォリーテン』 Favoriten
監督・脚本:ルート・ベッカーマン、脚本:エリーザベト・メナッス、撮影:ヨハネス・ハンメル
118分/オーストリア/2024年
「移民のヨーロッパ」、その最前線の教育現場。生徒たち(と担任の先生)の日々の冒険、失敗、闘い、成功が、子供の目線で見事に活写された、子供時代の讃歌とも言える心打つドキュメンタリー。
2024年ベルリン国際映画祭平和賞受賞作品
*日本語字幕付き German with Japanese and English subtitles
伝統的な労働者の街として知られているウィーンのファヴォリーテン地区。そこは今や移民とアイデンティティの間で揺れる現代ヨーロッパの鏡とも言える状況となっている。ファヴォリーテン地区にある小学校の生徒のほぼ全員が移民の子であり、様々な民族的・文化的背景を持った子供たちが同じクラスで学んでいる。公共教育の「危機的状況」が叫ばれるその最前線で実際に何が起きているのか。ベルリンを始め数々の映画祭で受賞経歴のあるドキュメンタリーの巨匠ルース・ベッカーマンが、そこに通う子供たちを3年かけてその成長を追いかける。

[F]『ベアトリックス』 Beatrix
監督・編集:ミレーナ・チェルノフスキー、リーリト・クラクスナー、撮影:アントニア・デ・ラ・ルッツ・カシック、出演:エーファ・ゾマー、カタリナ・ファーンライトナー他
95分/オーストリア/2021年
2021年FIDマルセイユ映画祭俳優賞受賞
*日本語字幕付き German with Japanese and English subtitles
植物に水やりをし、お風呂に入り、ボールで遊び、電話をし、友だちを呼ぶ。時々鏡で自分のイメージを確認するベアトリクス。女性の身体とそのイメージ、映画のナラティブについての親密な考察。
ある夏、とある家に一人で過ごすことになり暇をもてあますベアトリックスの日々が16ミリフィルムで端正に捉えられる。あらゆる期待から解放されたベアトリクスの姿をいかなるフレームにも閉じ込めようとしない監督たちのアプローチは、初期のシャンタル・アケルマンの作品にも通じる。植物に水やりをし、お風呂に入り、ボールで遊び、電話をし、友だちを呼ぶ。新鋭監督デュオによるデビュー作。

[G]特別上映 『ミダースの蟻』 Midas’ Ants
監督:エドガー・ホーネットシュレーガー(『Aun 阿吽』)
75分/オーストリア/2022年
*日本語字幕付き Italian with Japanese and English subtitles
ドクメンタへの出品など、アーティストとしても知られるエドガー・ホーネットシュレーガーの最新映画作品。人間の自然に対する考え方が変容する歴史的瞬間を味わうアヴァンギャルドなロードムービー。
ローマの近くには、ティレニア海を見下ろす古城がある。不機嫌な城主がボロ車から愛国的スローガンを喧伝する一方で、地元の司祭は自分の理解を超えるものは何でも撃ち殺す。移民の聖歌隊に混じって農民たちはヘーゲル的思考にふけり、哲学者のロバのバルタザールとその友人が人間の愚かさについて推察する…。

[タイムテーブル Schedule]
afw2024time
★監督の舞台挨拶とQ&Aあり

お得な3回券発売中 3,900円(税込) ※特典B3ポスター付き
当日一般:1,800円/学生・シニア1,300円/会員1,200円
※本映画週間では割引サービスデーの適用はございません。

▶︎2024年6月29日(土)より1週間限定公開

《当日料金》一般:1,800円/大学・専門学生:1,300円(学生証の提示が必要)/シニア:(60歳以上)1,300円/会員:1,200円(会員証の提示が必要・同伴1名まで同額割引)/障がい者割引:1,200円(手帳の提示が必要・付添いの方1名まで同額割引)

★特別企画「オーストリア映画週間2024」トークディスカッション
「What Makes Austrian Films Original? オーストリア:アート映画文化を支える社会」
日時:7月1日(月)14:00〜16:00(開場13:30)
場所:シアター・イメージフォーラム 3F「寺山修司」
登壇者:
ジェシカ・ハウスナー(『クラブゼロ』監督)
ヴェロニカ・フランツ(『デビルズ・バス』共同監督)
セヴリン・フィアラ(『デビルズ・バス』共同監督)
ローランド・タイヒマン(オーストリア映画協会 会長)
聞き手:深田晃司(映画監督)

入場料:「オーストリア映画週間2024」鑑賞チケット提示の方は無料 (チケット無しの人は500円)
席数:30名
予約はございません。当日受付のみです。

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