イントロダクション
「写真新世紀2020年度優秀賞」を受賞するなど、写真と映像を横断しながら表現を続ける立川清志楼が演劇とのコラボレーションのために制作した映像を再構築。マルチ投影のインスタレーション作品として新たに公開する。
昨年12月、北千住 BUoYで行われたモメラス実験公演『彼(私)から見える世界』。
自閉スペクトラム症を抱える子どもと母親のネグレクト(育児放棄)を描く松村翔子の未発表の新作戯曲より、主人公の子ども・実(みのり)から見える世界と家族にフォーカスした展示一体型演劇。戯曲・演出を松村翔子、共同演出を詩人・映像作家・俳優の黒川武彦が手がけ、会場内には、戯曲テキスト、写真家・映像作家の立川清志楼の作品が展示され、実(みのり)役は人形作家の井桁裕子が制作した人形が演じた。
今回、イメージフォーラム・シネマテークでは『彼(私)から見える世界』を新たに映像インスタレーション作品として展示する。前回公演の記録映像ではなく、テーマから再構築した映像を作成、複数のプロジェクターで投影する。映像と音のレイヤーで包み込まれた空間には、実(子ども)と鏡子(母親)のイメージが立ち上がり、さらに鑑賞者自らのイメージも立ち上がるだろう。これは、もうひとつの『彼(私)から見える世界』である。
「彼の見る世界は
あなただけに見える世界でもある
人形はあなた自身でもある」
展示映像
『彼(私)から見える世界』40分
作者略歴
モメラス
劇作・演出の松村翔子、俳優の井神沙恵、黒川武彦、上蓑佳代による演劇ユニット。
ユニット名はルイス・キャロル『ジャバウォックの詩』に登場する架空の生き物に由来する。現代口語演劇の写実的な世界観を保ちつつ、時空の異なる物語がパラレルに進み、異質なもの同士を混在させる作風が特徴。
松村翔子/Matsumura Shoko
1984年7月14日生まれ。神奈川県横浜市出身。モメラス代表・劇作・演出。青年団演出部所属。メーテルリンク作『青い鳥』で「利賀演劇人コンクール2017」優秀演出家賞一席及び観客賞二席受賞。『こしらえる』が「第62回岸田國士戯曲賞」最終候補、『反復と循環に付随するぼんやりの冒険』が「第63回岸田國士戯曲賞」最終候補にノミネートされる。2021年12月、脚本を担当した『こしらえる』の英訳リーディング公演がニューヨークにて開催。
黒川武彦/Kurokawa Takehiko
詩人・映像作家・俳優。2014年にモメラス加入。大学時代より詩作、自主映画製作を始める。映像・映画制作に携わりながらパレスチナ難民キャンプ、硫黄島など、様々な土地で書いた詩や身近な事柄の詩を朗読し発表している。スライド写真と詩を組み合わせた作品を都内で発表。
https://www.takehikokurokawa.net/
立川清志楼/Tatekawa Kiyoshiro
写真家・映像作家。1967年茨城県生まれ。イメージフォーラム映像研究所修了。展示「網膜反転侵犯」(2021年MEM)「写真新世紀展」(2020年、2019年東京都写真美術館)上映会「material zone=物質地帯」(2020年横浜美術館ほか)「〜映像と斜陽」(2020年scool)。受賞「写真新世紀2020年度優秀賞」(オノデラユキ選)、「写真新世紀2019年度佳作」(安村崇選)
https://tatekawa-kiyoshiro.com/