イントロダクション
エミリー・ドラマーは、研究を通してテクノロジーと自然界の間の相互作用を調査する映像作家。アイオワ大学で映画・ビデオ制作の修士号を取得。マクダウェル・フェローシップ、フラハティ・フィルム・セミナー・フェロー、プリンセス・グレース・アワード等を受賞。作品は、ニューヨークのリンカーン・センター、ノースウェスタン大学のブロック・ミュージアム、ロンドン短編映画祭、Ji.hlava国際ドキュメンタリー映画祭、UCLAフィルム・アンド・テレビジョン・アーカイブなどで上映されている。また、ピューリッツァー賞にノミネートされた小説家マリアンヌ・ウィギンズのドキュメンタリー『Marianne』(レベッカ・レスラー監督、2022年)を編集した。また、リセ・サンダースと共著した論文『Whispers Heard at the Pictures: Women's work in early cinema』はEarly Popular Visual Cultureの2022年6月号に掲載された。彼女の作品に関するエッセイは、Millennium Film JournalとBrooklyn Railに掲載されている。
作品紹介
Behind the Torchlight / デジタル/ 8分/ 2015
戦時中の映画館で働く女性に関する別の学術研究企画から生まれたプロジェクト。作家自身が10代後半から20代前半に映画館の案内係をしていたこともあり、当時「アッシャーレット」と呼ばれていた案内係に注目し、映画館の労働者かつ観客でもあった彼女たちと映画史とのユニークな関係を描く。作品は、アーカイブのテキスト、ロマンティックコメディー映画『The Good Fairy』のクリップ、『アメリカで最も美しいアッシャーレット・コンテスト』のニュース映像、ブルックリンのフラットブッシュにある映画館で撮影されたスーパー8映像によって構成され、編集により、ファウンド・フッテージとオリジナル素材の境界があいまいになり、代わりに流動的な存在と時間の感覚を生み出す。
Histories of Simulated Intimacy / デジタル/ 11分/ 2017
人間の愛と欲望を技術的に媒介することによって生まれる時間と空間のズレを調査する、感覚的なエッセイ作品。かつての恋人たちがフィルムメーカーに残したメッセージや、蓄音機のディスクに録音された音声メッセージなど、バラバラになった声が「イメージとしての物体」を探し求め、流水プールに漂う女性、暗くきらめくダンス・パーティーのうねり、かつて広大だったアイオワの大草原の記憶と痕跡など、存在と不在を同時に作り出す。作品はパブリックとプライベート、自然と文化、近さと遠さ、有機と無機といった両極を探求し、歴史的な時間の尺度によって隔てられた親密さのテクノロジーが、永続的に融合できる空間を作り出す。
Field Resistance / デジタル/ 15分45秒/ 2019
アメリカのアイオワ州を舞台に、現在の風景にディストピア的な要素を盛り込み、見過ごされてきた環境破壊を調査したドキュメンタリーとサイエンス・フィクションの境界にある作品。大学の植物標本室、原始的な動植物が生息するカルスト地形の陥没穴、通信塔の建設現場など、さまざまな場所から収集された記録映像は、植物の進化と人類の退化という架空のディストピア物語を想起させるために使用される。ナラティヴの着眼点として人間個人を否定し、人間と非人間が重なり合い、非全体的でありながら共生的な「内部崩壊的な全体」の視点を描く。
In the Keeping (制作途中のフッテージから10分のサンプル映像)
錦鯉産業を通して、グローバル資本主義、環境史、危機文化のつながりを検証するハイブリッド・ドキュメンタリー作品。観賞魚の繁殖サイクルに内在する質感や形状を突き詰めた視聴覚的研究であり、専門ブリーダーのジェニファーとマット・マッキャンが飼育する新世代の鯉がふ化し、収穫され、成長し、輸送され、展示され、国際的に販売される様子を追う。これらの行動は、ゆるやかなフィクションを展開しながら再構成され、魚自身の視点も交えながら、ミステリーの物語が描かれる。