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2004/6/27
しゃべり続ける女達、歩き続ける男達
 「イメージフォーラム・フェスティバル2004」一般公募部門に応募された作品の中からセレクトされた4つのストーリー。いずれの作品もドキュメンタリーとドラマの境界を往き来したアプローチの作品だが、それぞれの作品は、ある必然をもって記録と叙述のバランスが異なる。
 『the sisters by different fathers』では、実のところは赤の他人である3姉妹の一日の会話の様子が描かれる。もともと姉妹の様に親密な関係なのか、そうみえるだけなのかは判別できないが、日常において「演じる」事がいかに多いのかを気づかせてくれる。ビデオカメラを使った新しい遊びとしてこの”家族ごっこ”が広く定着したら面白いかもしれない。
 『路地裏サイレント』はタイムラインに並べられた3つの写真集の趣。タイトルにもあるようにほぼサイレントで構成されているが、充分に音を聞かせてくれる作品。
 ソクーロフの作品を彷彿させる『壊走』は、夜中の街をあてどなく彷徨う一人の男が主人公。ドラマの形式ではあるがドラマチックに快走するシーンはない。そのかわりに、細部に微妙な仕掛けが施されて、奇妙な出来事がが解決しないまま済し崩しに続く。不眠を紛らわす為にあてどなく歩き、仕方なく戻ったベッドで直前の出来事を反芻している感覚。
 『日向ぼこ』は、実際の姉妹が実際の関係をテーマにしたドキュメンタリスティックな物語。そしてこの物語の制作において、現実の姉妹の関係に影響を及ぼすべく(またはそれが動機になって)構成されている。人生の転機をむかえ、個人と個人の対話を成立させる為に「映画」が手段として存在している。近年のドキュメンタリーともドラマともとれる作品に見られる切実さがこの作品にもうかがえる。(澤隆志)
日向ぼこ
受付(入替制)
当日900円/会員600円/2回券1500円

■上映作品
Aプログラム
路地裏サイレント 酒井慶太/ビデオ/29分/2003
日向ぼこ 佐藤いづみ/ビデオ/49分/2003

Bプログラム

the sisters by different fathers
 高田智子/ビデオ/24分/2003
壊走 山路卓/ビデオ/51分/2003