国内外の映像アート作品の上映、レクチャーを定期開催。古典的名作 から、最新の実験映画まで

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2005/11/20,27
「何か話題出して」
もともとはファイル共有の名札のようなものから派生し、今や生活の必需品とされているEメール。使われていくうちに何となく作法ができて、さらに伏せ字、誤変換、アスキーアート、顔文字などの派生表現を生み出した。
時には人間関係を作り、あるいは壊し、Eメールは今や電話とも手紙とも違う非接触コミュニケーションの代表的な存在となった。送受信履歴は所有者の人格のように扱われて4,5年前からメールやチャットの依存が社会問題になっている。やがてメールや掲示板のやりとりは現実の一部と認知され、感動的なやりとりはドラマや小説になっていった。
しかし、2003年のイメージフォーラム・フェスティバルで『手紙』が発表されるまでは、メール送受信それ自体の心理的ドラマを扱った作品はおそらくなかったと思う。作家である佐々木友輔自身が思春期の若者であり、若者たちに爆発的に携帯メールが流行した時期でもあった。高い通話料や通信料に伴い、極力短い言葉でやり取りし、それが持続することが少し嬉しかった近過去の、だれしもが思い当たる共感。いつくるか分からない返信をじっと待つというおおよそ無為な、それでも気になる「時間」は、映像作品として、同じだけつきあわされてみると、それは恥ずかしいくらい強調されてTVドラマよりも忘れられない「鬱屈した青春」を活写するのだ。(澤隆志)

手紙●ある晩届いた、手書きでもなく、時間をかけて考えたわけでもないであろう1通のメール。けれど、そのメールに込められた小さな優しさに気づいた時、相手のことを疑っていた自分がたまらなく恥ずかしく思えた。そして、うまく言葉にできない感謝の気持ちを伝えるため、映像を使って「手紙」を書いた。今現在、まだこの手紙はその相手には届いていないが、これからも自分が映像を続けていれば、いつか届く日が来ると信じている。<2002年>
ふたりに●人と人が「出会う」ことから物語は始まる。しかし、「出会う」ことはそんなに簡単じゃない。映画のように最初の5分で運命の出会いに巡り会うような人はほとんどいない。そうかと思えば、にわか雨のように突然出会いが降ってくることもある。そんな気まぐれに振り回されながらも、淡い期待を捨てきれない人たちが愛おしい。これは、「物語」が始まるのを待ちこがれている人たちの物語です。<2005年>
これまではただ送信する立場だった。「分かってほしい」というメッセージだった。確かに映像作品はそれ自体は一方通行の表現手段ではあるが、今送信しているのは「分かり合おう」というメッセージである。作品を観賞した人が、今度は送信者としてこちらにメッセージを送り、それに対してまた返信していく。そんな作品をつくることが理想である。そしてそれが、これまで私のメッセージを受信してくれた人たちに対する返信でもある。(佐々木友輔)

佐々木友輔●1985年生れ。高校時代のワークショップで実験映画に出会う。『手紙』がイメージフォーラム・フェスティバル2003一般公募部門大賞を17才で受賞。個人映像集団『化粧』(kesou) メンバー。東京藝術大学先端芸術表現科在籍中。

佐々木友輔インタビュー
------普段から沢山メールのやりとりはされるのですか? 世間的には携帯電話のブームは一段落した感じがするけど、学校なんかではどうですか?
佐々木友輔(以下S):一時期、毎日のようにメールをやりとりしていたことがありましたが、最近はそうでもないです。周りの友達も同じような感じですが、一日に来たメールの件数が話のネタになったりするので、それなりに皆も気にしてるんだなとは思います。
------なんとなく気持ちはわかりますね。目的と手段が逆転しちゃってる… ボロボロの携帯から送信される「何か話題出して」というメッセージは、すごくリアルだった。
S:相手に自分の気持ちを伝えたい。でも直接伝えるのは恥ずかしい。だから相手の方から気付いてもらうのを待つしかない。そのためには、少なくともメールは続けておかなければならない。けれどそれまでの間話す話題なんてない。そんな風に考えて、行き着いたのが「何か話題出して」という言葉だったのだと思います。
------メールというのは手紙とおしゃべりの中間の様なツールですけど、あえてタイトルを「手紙」としたのは何か意図があるのでしょうか?
S:本当に伝えたい気持ちを伝えるために考えた言葉なら、その手段としてメールを送るのも手紙を送るのも、口で伝えるのも、同じことだと考えました。メールというテーマはすぐに過去のものになるけれど、この伝えたいと思う気持ちは普遍的なもので、「手紙」という言葉にも何か普遍的なものを感じました。
<聞き手:澤隆志 2003年3月21日>
手紙
ふたりに
※11/20 2:00の回上映終了後にティーチ・インを行います。チケット半券で参加できます

受付
一般900円/会員600円

<上映作品>
ふたりに 佐々木友輔/ビデオ/10分/2005
手紙 佐々木友輔/ビデオ/72分/2002
 映像のコスモロジー2003化粧展出品
 イメージフォーラムフェスティバル2003大賞受賞
 
バンクーバー国際映画祭出品
 ロンドン映画祭出品
 ロッテルダム国際映画祭出品
 ブリスベン国際映画祭出品

 

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